子どもにかかる、もうひとつの「見えないコスト」
前回、「便利で安い」街に住むと、見えないコストを払うことになる という話を書きました。
子どもは、いろんな意味で純粋です。 大人のように「自分は自分、人は人」と切り離して考えることができないぶん、まわりの空気を、そのまままっすぐに吸い込んでしまいます。
だから、このコストは、大人よりも子どもの方が、ずっと深く影響を受けている のではないか──最近、よく思います。
わが家で実感していることを、書いてみます。
① 子どもの「時間」が、ダブルで削られていく
公立小学校・中学校の 授業の進み方や深さ には、実は地域差があります。
うちの地域では、学校の授業だけでは内容が足りず、塾に行って補習する ご家庭がとても多いです。
- 学校で 6時間 拘束される
- 帰宅後、塾で 2〜3時間 拘束される
- 学校の宿題と、塾の宿題、両方やる
学校が頑張っている地域なら、本来 塾は不要だったか、習い事に振り向けられるはず の時間が、補習でじわじわと消えていきます。
これは「塾代がかかる」というお金の話だけではなく、それ以上に 子どもの放課後そのもの が、毎日少しずつ削られていく、という話です。
② 子どもの「言葉づかい」や「振る舞い」も、まわりに少しずつ似てくる
学習面と同じくらい大事だと感じているのが、言葉づかいや振る舞い の話です。
子どもは、家庭で過ごす時間よりも、学校や近所で同年代の子どもたちと過ごす時間 のほうが、だんだんと長くなっていきます。 そのなかで、まわりの言葉や振る舞いを、自然に取り入れていくものです。
- 友達の口調が、いつのまにか自分の「ふつう」になっていく
- まわりの接し方が、家での話し方にも、ふっと出てくる
- 家で「そんな言い方しないでね」と伝えても、外でそれが「ふつう」だと、なかなかすぐには変わりません
家で気をつけられることはもちろん大事です。 でも、子どもが毎日浴びている空気の量は、家庭よりずっと大きい。
だからこそ、どんな空気の中で日々を過ごすか は、子どもの「ふつう」をつくる、大切な要素になります。
③ 親の「ヒヤヒヤ」が、毎日増えていく
治安があまり良くない地域だと、不審者情報のメール が、しょっちゅう届きます。
住んでいると、内容によっては「ああ、また来たな」と流せるようにもなります。 でも、それが自分の子どもの 校区内 で起きた話だったときには、やっぱり ドキッ とします。
子どもを一人で歩かせていいのか迷う場面が、少しずつ増えていく。 これも、目には見えないけれど、確実に親子のエネルギーを使っています。
街の「子育てしやすさ」は、どう確かめる?
家を決める前に、できる確認はいくつかあります。
学校の質を見る
- 候補の街の 周辺にある塾の種類 を見てみる
- 「補習目的」の塾ばかりの街は、学校の授業がそれだけ足りていない可能性
- 自治体が公開している 学力調査 の結果
治安を見る
- 自治体の 「不審者情報メール」 に試しに登録してみる
- どれくらいの頻度でお知らせが来るかで、街の温度感が見える
通学路を歩く
- 候補の小学校の 通学路 を、平日の登下校時間に自分で歩いてみる
- 子どもたちの表情、見守りの大人の数、街の整備状況
子どもたちの様子を見る
- 候補の街の 小学校の近く や 公園 に、登下校・放課後の時間に行ってみる
- 遊んでいる子どもたちの 言葉づかい・お互いへの接し方
- いっしょにいる 親同士の会話のトーン
数字でハッキリ出るわけではないですが、「今、この街で子育てしている人の感覚」 が、少しずつ見えてきます。
子どもにとって、街は無料の教科書
子どもは、街にあるものを毎日見て、自分の「ふつう」を作っていきます。
- 譲り合う大人を見て育つのか、ぶつかり合う大人を見て育つのか
- 落ち着いて勉強できる学校に通うのか、塾に補習を頼る学校に通うのか
- 安心して走り回れる道で育つのか、不審者を警戒する道で育つのか
これは、家賃や税金のような 目に見えるコスト には、絶対に反映されません。 でも、子どもの「ふつう」を決めていく、いちばん大切な要素かもしれません。
家を決める前に、ぜひ 「子どもにとって、この街はどんな教科書になるか」 を、想像してみてください。
次回は、生活コスト(国民健康保険料・水道代・ガス代)の話を書いていこうと思います。
街えらびを始めようとしている誰かの、小さなヒントになれたら、うれしいです。